昨今、教師の労働環境が問題になり、教員志願者の減少に繋がっている。今回は、文部科学省(以下、文科省)の情報発信と現状について考えたい。今回は、平成31年の文科大臣の「学校における働き方改革に係る文部科学大臣メッセージ」を取り上げる。令和5年の今、4年半程前のメッセージであり、少々時間が経っているが、その取り組みの進捗状況を評価する指針になるのではないかと思う。
※考察は筆者の勤務経験からであり、それぞれの地域・学校においては異なる実情もあることから、日本全国全ての学校の現状を反映しているわけではないことをご理解頂きたい。
世界からも評価の高い我が国の学校教育を持続可能なものとし、教師が子供たちの指導に使命感を持ってより専念できるように、平成31年1月25日の中央教育審議会答申「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について」を踏まえ、学校における働き方改革を強力に推進することが必要です。
文部科学省としては、省を挙げて学校における働き方改革を強力に進めるため、大臣を本部長とする「学校における働き方改革推進本部」を設置し、取り組むべき方策等をまとめた工程表に基づき、様々な取組を総合的に進めているところです。また、学校や教育委員会任せでは働き方改革は進まないとの認識の下、文部科学省が学校と社会の連携の起点・つなぎ役としての役割を前面に立ってしっかりと果たすため、答申の考え方を踏まえ、「子供たちにとって真に必要なものは何か」「何が教師本来の役割であるのか」ということ等について、下記のとおり文部科学大臣からのメッセージを出させていただきました。
子供たちの未来のため学校が質の高い教育を提供し続けられるよう、文部科学省として全力を尽くして取り組んでまいりますので、関係者の皆様におかれましても、子供たちへのより良い教育のための学校における働き方改革に御理解・御協力をお願いします。
学校における働き方改革に係る文部科学大臣メッセージ:文部科学省 (mext.go.jp)
上記引用は、メッセージの一部抜粋であり、全文はこちらを参照して欲しい。
メッセージ内容は「政府関係者・関係団体」「保護者・地域」「教育委員会・学校の教職員」の3つある。「政府関係者・関係団体」については、一部抜粋であるが以下に記載する。
・ 学校への子供・家庭向け周知等の依頼は厳に精選いただき,学校を経由しない方法(公共施設等での配布,インターネットや広報誌への掲載など)を活用いただくこと。
title (mext.go.jp)
・ 学校に依頼せざるを得ない場合も,学校への依頼方法は教育委員会等の判断に,周知方法は各学校の判断にそれぞれ委ねていただくこと,また,配布が必要な場合は,児童生徒分の部数を確保した上で,学級担任が配りやすいよう,例えば,あらかじめ 40 部ずつ仕切りを入れること。
・ 作文・絵画コンクール等について,学校単位での応募や学校による審査や取りまとめを要件としない,また,学校経由での子供への周知を求めないようにしていただくこと。
・ アンケートへの回答など,学校の関与が不可欠でないものについては,学校が集約することを前提とせず,直接各機関に送付できるようにしていただくこと。など,御配慮いただきたいと考えています。
学校には、様々な外部団体から常時、イベントの案内や募集の文書の配布依頼があり、それに関わる文書を児童生徒に配布している。特に夏休みには、外部団体の広報活動を兼ねたポスター・作文・工作・読書感想文等の作品募集依頼がある。夏休みの宿題として児童生徒に行わせてもいるので、学校にも一定の責任はあると思うが、夏休みが明けると児童生徒が持参した作品の整理や名簿の確認、取りまとめ、添削や代表の児童生徒の選定等に追われ、本来業務である授業の準備時間を大幅に削がれる事態が発生している。
上記文には、その点がしっかり記載されており、教師の意見を汲んだものとなっている点が評価できる。しかし、現状では、昭和・平成の時代と変わらず、教師が作品の取りまとめをしている。また、教師も誤字脱字や作品応募票の位置、画用紙の規格等の表面的なチェックを完璧にしようとするあまり、過度な労働に繋がっていることも否めない。
次に「保護者・地域」へのメッセージは、以下の通りである。
~前略~
「そのくらいなら,自分の方が働いている!」「忙しいのは先生だけみたいなこと言わないで!」。皆さまから,そんな声が聞こえてくるかもしれません。ですが,働き方改革が必要なのは先生を楽にするためではありません。学校が,子供たちの未来に直結する場所だからです。
~中略~
お住まいの地域の学校でも,これから『朝の登校時間を改める』『夜は学校も留守番電話を設置する』『部活動の時間を見直す』『子供の補導時は基本的に保護者に対応いただく』といった取組が始まります。こうした中,地域全体で子供たちによりよい教育環境を実現するため,学校・家庭・地域が教育目標を共有し,それぞれ何ができるか考え,連携・分担することが重要です。例えば,保護者や地域の方々などがサポート・スタッフや部活動指導員,ボランティアとして学校に参加する,土日の地域行事や登下校時の見守り,夜間の見回り等は地域が主体的に担うといった取組をこれまで以上に進めていただくことも考えられます。特に,PTA に期待される役割は大きく,学校や地域との役割分担を話し合い,共通理解を得ながら,活動を充実することが大切です。
~後略~
title (mext.go.jp)
保護者・地域へのメッセージでは、世間一般の情緒・感情論を紹介しつつ、働き方改革が教師が楽をするためでなく、子供達を取り巻く教育環境の改善に繋がり、子供の未来に直結すると述べている。全くその通りであるが、現場感覚から言えば、人権侵害とも言える労働環境をなんとかして欲しいというのが本音であろうと思われる。
また、部活動の活動時間の短縮や勤務時間外の留守番電話などは若干進んで来たようには感じる。しかし、朝の登校時刻や補導時の対応については、まだ進んでいないように思われる。登校時刻に関しては、保護者の出勤時刻の制約を受けてしまい、教師の勤務時刻の30分以上前に登校してくる児童生徒も多く、校内での事故対応を考えると、児童生徒の登校より以前に出勤せねばならなくなっている。補導時には、警察から学校や管理職へ連絡があり、窃盗などは、店舗に行って店主に謝り、保護者に連絡の上に後日、指導を行ったり、行方が分からない児童生徒の捜索をしなければならなかったりする。
いまだ、保護者や地域社会の学校依存の意識は改善されているとは言い難い。
最後に「教育委員会・学校の教職員」へのメッセージの中で学校の教職員に向けたメッセージは、以下の通りである。
<学校の教職員の皆様>
いつも子供たちのために御尽力いただいていることに感謝します。このたび,これまで学校や教師が担ってきた代表的な14の業務を始め,学校や教師が担うべき業務の考え方を示しました。教育委員会の支援を受けて,これを機に,学校業務の見直しをお願いします。勤務時間を意識した働き方も重要です。限られた時間の中で子供たちへの効果的な指導を行うため,メリハリをつけた時間の使い方が大切です。是非,実践的な取組をお願いします。校長等の管理職の皆様,組織マネジメントは管理職の重要な仕事です。これまで慣例的にやってきた業務も今一度見直しをお願いします。優先順位をつけて,必要性の低い業務は思い切ってやめること,家庭・地域との適切な役割分担を進めるために学校運営協議会の場等で話し合い,理解・協力を得ることも大事です。
学校教師が担ってきた14の業務については、機会があれば言及したいと思う。勤務時間を意識した働き方について、自助努力による取り組みの必要性を述べている。自身の経験から言えば、自助努力は大切であり、効率的な業務遂行を心がける必要性については、疑う余地はないが、その業務量は、もはや自助努力でどうにかなるレベルではないと言い切れる。また、管理職のマネジメントにも言及しているが、管理職も地域や保護者からの要求や今までの様々なしがらみに苦慮している様子も見られる。また、2年~3年で他校へ異動もしくは、退職ということで事なかれ主義に陥ったり、改革を断行しても後任者が以前のような形に戻してしまったりすることもよくみられることである。
【まとめ】
・平成31年に、文科大臣名で「学校における働き方改革に係る文部科学大臣メッセージ」が出されたが、4年以上経った今でもそこで述べられている取り組みについては、多少の前進は見られるものの、現場の窮状を大きく改善することはできていない。

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