東大阪市で、長時間労働で適応障害を発症したとして、市立中学の教諭が大阪府と市に慰謝料などを求めた訴訟の判決が大阪地裁であった。この件について考察したい。
教諭の過重労働に対策講じず 東大阪市などに賠償命令 大阪地裁 : 毎日新聞
—トピック—
- 長時間労働で適応障害を発症したとして、東大阪市立中学の男性教諭が大阪府と市に慰謝料などの損害賠償を求めた訴訟判決が大阪地裁であった
- 理科や3年生の学年主任、進路指導主事、野球部の顧問などを担当し、その後、約1年1カ月休職
- 男性の時間外労働は発症直前の1カ月間で136時間、その前月で156時間に上り、精神疾患の公務災害の認定基準を大きく上回る
- 「授業のコマ数を減らすか進路指導主事から外してほしい」と校長に訴えたが、「代わりはいないので踏ん張ってほしい」と答えるだけだった
- 男性は「教員は異常な働き方が当たり前になり、感覚がまひしている。この判決が働き方改革が進むきっかけになってほしい」、東大阪市教育委員会は「教職員の長時間勤務は大きな課題と認識している。業務整理や効率化を進めていく」とコメント
長時間労働で適応障害を発症したとして、東大阪市立中学の男性教諭(43)が大阪府と市に慰謝料など計330万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が9日、大阪地裁であった。小川嘉基裁判長は男性の負担軽減を講じなかった校長の注意義務違反を認め、府と市に計220万円の支払いを命じた。
教師の勤務に関する訴訟は、近年では、埼玉県の訴訟が全国的にも大変有名である。そちらは、残念ながら敗訴になってしまったが、機会があれば取り上げたいと思う。今回は一審勝訴と言うことで、大変喜ばしく感じる。今回の訴訟は、管理職の勤務管理が成されていない(注意義務違反)ことを主訴としていることが画期的であると感じる。
判決によると、男性は理科の授業や3年生の学年主任、進路指導主事、野球部の顧問などを担当。2021年9月下旬ごろ、不眠症状などが出て仕事に集中できなくなり、同11月に適応障害と診断された。その後、約1年1カ月休職した。
学年主任と進路指導主事を兼務させるのは、厳しいように感じるが、数的にそれほど多いという印象も受けない。更に過酷な条件で日々業務に当たっている教員も少なからず存在していると思う。ただ、校内環境やその人の適正等の因子は一様ではないので、校務分掌の多少や軽重で、仕事の大変さを判断するのは、難しいと思う。
判決はまず、男性の時間外労働は発症直前の1カ月間で136時間、その前月で156時間に上り、精神疾患の公務災害の認定基準を大きく上回っていたと認定。さらに、学習指導要領の改定に伴う対応、修学旅行や保護者会の準備などで負荷が増加したと指摘した。
2ヶ月で292時間の時間外労働とは、全く酷い話だ。1ヶ月30日の暦日で考え、292時間を60日で除すれば、約5時間という時間外労働が算出される。毎日が労働日ではないので、実際は、23時や24時退勤が日常的に行われていたことと推察される。これで残業代は一切つかないのであるから、労働問題と言うより、人権問題ですらあると思う。
※教職調整額4%は残業手当ではなく、業務と時間の切り分けが難しい教職の特性を鑑み、支給されている手当であると筆者は認識している。世間一般では、残業手当と認識されているようではあるが。
男性は「授業のコマ数を減らすか進路指導主事から外してほしい」と校長に訴えたが、校長は「代わりはいないので踏ん張ってほしい」と答えるだけだったという。小川裁判長は、校長が男性の負担増加を認識することができたにもかかわらず、勤務時間を減らすなどの具体的な措置を取らなかったと結論付けた。
この裁判は、男性教師の訴えに対する上司の不作為を問題にしている。以前は、給特法を背景に管理職が勤怠管理や部下職員の心身の健康には、気を遣わないというのが、教育業界のスタンダードであった。この判例が全国の教師にとっての追い風になるとよいと思う。ただ、「代わりはいないので踏ん張ってほしい」と言う言葉も管理職の本音であり、欠員補充もままならない酷い有様の教育現場を責任者として取り扱っていかなければならない管理職にも同情の余地は大いにある。
男性は判決後に大阪市内で記者会見し、「教員は異常な働き方が当たり前になり、感覚がまひしている。この判決が働き方改革が進むきっかけになってほしい」と期待した。
東大阪市教育委員会は「教職員の長時間勤務は大きな課題と認識している。業務整理や効率化を進めていく」とコメントした。
「教員は異常な働き方が当たり前になり、感覚がまひしている。~」この言葉に尽きると思う。教育業界にも民間企業で働いた経験を有する人材が入ってくることがあるが、口をそろえて、教師の労働時間に対する、鈍感さを指摘する。教師は高度な専門職であり、時間で管理されて俸給をもらう仕事ではないと言う意見も聞いたことはあるが、現実はそんなお高くとまったことを言っていられるような状況ではない。教育委員会のコメントは、お決まりの常套句であり、特に言及することもない。
今回の判例もそうであるが、政治の方も多少の改善策は見られないわけでもない。しかし、迅速さに欠ける面は否めない。「議論百出なれど、成果なし」では、手遅れになってしまうのではないかと思う。


コメント